31.猫になるとき

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今日は、日中暖かかったのでチューリップの球根を埋めた。25個ぐらい埋めたけど、まだ球根は50個ぐらい残っている。早く埋めてしまわなければ。
それから一株残っていたアネモネのポット苗も植木鉢へ植え替えた。

それにしても、スイートピー、クロッカス、チューリップ、水仙、どんどん芽吹いてしまって、心配だ。
東京の昼は暖かいから、春と勘違いしているのだろうか。
寒さに当たらないと咲かないものもあるし、か細い芽でこれから冬を超えることができるのかも不安だし(特にスイートピー)、毎日鉢を覗きながらやきもきちしてしまう。
自分自身は暖かいほうが、いろいろな洋服が着れて楽しいと思うけれど。

夜、お友達から電話があって、お喋りした。
先週、元気がなくて、何度も電話をかけた相手だったので、やたらとまとわりついていた私を鬱陶しく感じなかった?と尋ねたら、そんなにまとわりついてもいなかったよ、と言われ、ほっとすると同時に、猫がお腹を見せちゃうみたいに、じゃあ、また甘えてまた電話しちゃおう!という気持ちになった。大人だってひとに甘えたいときがあるんです!

 

 

30.アパートの鍵貸します

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母と新宿へ映画『ラストエンペラー』を観に行く。既に観るのは四回目なのだけれど、大きなスクリーンで観るのは初めて。なにしろ紫禁城の迫力がすごい。よく中国がロケに貸し出したと思う。映像美に溺れること3時間。
溥儀に対しては知れば知るほど気の毒なひとという印象が深まっていく。母も同じことを言っていた。
でも、昔、溥儀の人生についてまとめて何冊か本を読んだとき、晩年はもと看護婦か何かをしていた普通の女性と知りあって、人並みの家庭を築いて暖かな暮らしを送ったと書いてあった(良かったね)。

帰りに母の好きな小龍包を食べに行き、ユニクロで私が使っているのと同じ、園芸用にちょうどいいパンツを買ってあげた。その後、私の具合が悪くなり、喫茶店に寄って少し休んでから別れた。母を駅の方向へ見送った後、ルイ・ヴィトンで買うものがあったのを思い出し、ルイ・ヴィトンに戻る。スピーディのバンドリエール。

次の「朝十時の映画祭」は『アパートの鍵貸します』だ。「絶対誘ってね!」と母は言っていたけれど、それこそ絶対母は観ているはず。もちろん私も一度観ている。ジャック・レモンとシャーリー・マクレーン。年末旅に出るのは反対されたけど、母娘でジャック・レモンを観るなんてなんだか洒落た暮れになりそうだ。

 

 

29.サプライズボックス

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今日は、私のウェブサイトのほう(hasebechisai.com)に最近の掲載誌情報を二、三アップした。気づいてくれるひとはいただろうか。まだ使い方に慣れていないひとも多いかな。
もちろん、私だって、情報はSNSで流したほうがいいことぐらい知っている。でも、SNSはやはり性に合わないというか、リプライが早くて弾みがある一方、不要な人にまで情報を押し付けて、ポイッとゴミ箱に捨てられているみたいに感じることも多くて。まあ、拡散効果はなくても、ブログもスタートしたことだし、自分の情報サイトもできたことだし、マイペースでやっていこうと思う。

ところでいま、サプライズボックスを作っていて、内容は、ちょっと大人ガチャにも似ているけど、もう少し豪華。事務所にあった、ノヴェルティ同梱用CDケースに、昔、私が企画制作に携わっていたヴァレンタイン用コンピレーションCDとその他オマケ的諸々が詰まっているもの。当時、CDを買い逃した人はこれが最後のチャンスです。選曲は小西(康陽)さんなので、間違いはありません。で、レーベルデザインは大石裕子&長谷部千彩。ネットショップではこういう大量生産できない手作りのものをのんびり売って行きたい。煙草屋のおばちゃんとか駄菓子屋のおばちゃんのイメージで。そのうちお手玉なんかも作っちゃうかもね。

 

 

28.あめんぼみたいに

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久しぶりに仕事上のトラブルに遭遇。こちらが悪い話ではなく、相手に100%責任があって、しかも相手も非を認めているので、私がイライラハラハラすることもないのだけれど、師走の忙しいときにややこしいことが起こるのは嫌ですね。この時期はあめんぼみたいに何事もすいすいやり過ごしたいのに。

年末はどこかへ行こうかと思っていたけど、結局どこにも行かないことに。母に、別に年末年始じゃなくてもとろうと思えば休みがとれる仕事なのだから、暮れの慌ただしいときに旅行なんてやめなさい、と言われたので。確かに忙しない時期にわざわざ出かけて行って、事故に巻き込まれたりしても良くないし、家でのんびりしているのが一番かもね。
私のまわりには意外とそういう考えのひとが多くて、友人のひとりは、むしろひとのいない東京をブラブラしているほうが楽しい、と言っている。それなら私はホテルのお正月料理でも食べに行こうかな・・・なんて、余裕あるふりしてみたけれど、たぶん年内にこぼれた仕事をひとりでやっているでしょう。是、ほぼ確実。ああ、本音を書くと全然楽しみじゃないお正月!つまらない!

 

 

27.好みの男性

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洗濯物をたたみながら、ジョニー・トー『ザ・ミッション 非情の掟』を観る。オープニングのタイトルバックの筆文字の並びから、「おお、黒澤!」と声を上げてしまう。要するにこれは『七人の侍』へのオマージュなのだと思う。化学調味がかかって香港味になっているけど。そして、アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ジャッキー・ロイ、ラム・シュー、ロイ・チョンと、七人じゃなくて五人になっているけど。
それはともかく、やっぱり私のお目当てはロイ・チョン。たぶん『七人の侍』だったら、ロイ・チョンは凄腕の剣客として活躍する久蔵なんだろうなあ。口数少ない射撃の名手として登場するから。そのロイ・チョンが最後の最後に裏切った仲間を殺せないというところに面白さがあるというっていう話なんだけど・・・なんてロイ・チョンがあまりに好み過ぎて(物静かで骨太な感じの人が好きなの)、全然これじゃ物語の説明になっていないですね。ともあれ、キャラクターそれぞれ見せ場があっていい映画でした。
それと面白かったのは、特典映像に劇中使用された拳銃の解説があって、その解説がオタクすぎて、ここでこの役者がこういう行為をするのはガンマニアにとっては謎であるとか、この銃ではあの距離は届くわけがない、みたいな、鑑賞後の感動にバンバン水を差す知識を与えくれるところ。あまり使わない知識だけど、いろいろ知れて良かったナ。

 

 

26.春はたぶん九週後

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今日は通院日。待ち時間は一時間。近くのカフェで書籍作成のための改稿作業をして時間をつぶす。
お医者様にはできるだけ仕事しないでボケーッとする時間を作ってください、と言われているのに、こんな細切れの時間にまでモニターと向き合うってどうなのだろう。
ただ、ひとつ言えることは、私のミニノートPCはヴィヴィアン・タムモデルなのだけれど、見た目が良い分、なにしろ遅い。コマンドを入れると、まず画面をパタパタと蝶が舞う。そして蝶が留まると作業が開始されるのだ(=蝶が留まるまで作業が始まらない)。
――先生、確かに蝶々が舞っている間はボケーッとしていまーす。だから半分言いつけを守っていまーす。

診察では、週に一日、二日は仕事をしない日を作ること、という努力目標を与えられた。それぐらいなら友達や母と一日外で遊んでいれば達成できそうな気もする。
一応会社という形をとっているにせよ、フリーランスと業務内容は変わらないので、私には土日だろうが机に向かってしまう習性が身についている。朝、机に座ることのほうが、座らないことより抵抗感がないのだ。そのスタイルで既に20年もやってきた。
でも、この先の人生を考えると、健康のためには、習慣だけで仕事をしてしまうこと自体改めるべきなのだと思う。
体を大事に――そんなことを真面目に考えるようになった四十代。人間の成長は止まらない。

ところで、おととい水仙とフリージアのの球根植え、プリムラとアネモネの植え付けをしたのだけれど、水仙もフリージアももう芽を出している!早すぎないだろうか。東京は日中気温が上がるけど、まだ春じゃないのよ。

 

 

25.青いテラリウム

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五月にポップアップショップ『little shop of memorandom』の大人ガチャガチャで私が当てたのは、青いテラリウムだった。越智(康貴)さんが作った球体。あれから七か月経っているけど私はまだ育てている。
私の青いテラリウムは表面が苔に覆われて、じっと中を覗いていると、まるでスイスの山の麓の丘陵にいるみたい。小さな山羊の人形でもあれば置きたいのだけれど。
同じ青いテラリウムを当てたお友達は、単子葉植物の芽が出て、どんどん伸びて球体の天井にまで届き、背の高い男の人が猫背になるみたいに球体の丸みに沿って葉の先を地面に向けていた。
当たり前の苔や当たり前の雑草でもお互いのテラリウムを見せあうのは楽しい。なんでもないことがいつも私は楽しい。

 

 

24.The World is Yours

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『火星までお買い物』の第三回原稿公開の準備が済んだので、DVDで『スカーフェイス』を観る(打ち上げ気分)。

物語はキューバからの移民、トニー・モンタナが持前の度胸と機転を活かしてコカインの売買でマフィアとして成り上がり、挫折していくストーリー。監督はブライアン・デ・パルマ。このあらすじなら、もう少し作品に深みを持たせることができたのでは、とも思うけど、映画としては十分楽しめた。というか、私はやっぱり銃撃戦のシーンが好き。邦画にありがちな20代の恋愛どうこうの話よりも断然好き。ラストのアル・パチーノが蜂の巣になってプールに落ちるまでの数分間とかホント興奮するもん。あと、トニーが見上げた夜空に“The World is Yours”と書かれた飛行船が浮かんでいるところなんかも映画的でぐっとくる。
それと、アル・パチーノの良さというのがいままで全くわからなかったのだけれど、『スカーフェイス』を観て、やっと魅力がわかったような気がする。正直さと狡猾さが共存しているところですね。ね。ね。ちょっと女性に甘えた感じもあって。なるほどなるほど。これでアル・パチーノ嫌いを克服できたので、実はまだ観ていない『ゴッド・ファーザー』シリーズにも駒を進められそう。観ても観ても名画はつきないなあ。

 

 

23.夏の終り

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瀬戸内晴美『夏の終り』読了。原作を読むと、映画がいかに駄作であったかがわかる。脚本家も監督もまるでわかっていない、と思わず文句を言いたくなった。そして、原作はさすが瀬戸内晴美、体を張っているひとは違う、と感嘆しきり。
私も年をとっても恋愛し続けるタイプだとは思うけど、それを作品化できるかというとまた別な話。できないだろうなあ。できない、たぶん。そんな勇気ない。でも、その一方で、愛の問題に身を削りながら突進していく瀬戸内晴美の小説は、あられもない女の姿なのかもしれないけれど、物書きってそういうあられもないところを読者に見せてなんぼなんじゃないかという思いもある。そう考えると私の文章なんて子供のお絵描きみたいなものですね。

以下、本文中で一番好きだったところ。
《慎吾(=知子の別れたばかりの恋人、妻帯者)が無意識に、距離感に左右されて、つい知子の新しい家を訪れることが億劫になるのも、知子が家の雑用や仕事に追われることで、あれほどの涙を忘れてしまっていったのもつまりは、生活という雑事と習慣の繰返しが、意外な強さで人間の感情や感傷を、のみこみ押し流していくせいなのかもしれなかった。そしてそれは知子に、慎吾とのかつての生活が、やはり、愛や情緒より、生活の習慣と惰性で保たれていたことを、今更のように思い返させていた。
慎吾と別れたら、慎吾もじぶんも、生きていけないのではないかと、本気でおそれていたあの長い歳月の暗示は、いったい何にかけられていたものだろうか。知子は急に、憑き物が落ちたような虚しさと白々しさの中にいるじぶんを感じていた。同時にひどく軀中が軽くさわやかになっているのを認めないわけにいかなかった》

ここまで書いちゃうんだもん、逃げ場ないですよ。

 

 

22.朝日

TLTSA22

朝、日が昇るのを眺めながら、いま話が来ている仕事は、条件さえ合えば、引き受けたいという気持ちになっていた。
来年から再開する連載がいくつかあって、体力には自信がないし、当然お医者さまからは反対されると思うけど、それでも引き受けることが自分をいい方向に連れて行くような気がした。

香港通いを始めてから、自分の書いているもののモチーフが香港と東京に偏っている部分が確かにある。だから、まったく違う場所のことを書くというのは、自分自身の気分転換になるのではないか、とも思うのだ。
(と、同時にそんなにあれこれ手を出していいものか、と迷いもあり)

午後、税理士さんと打ち合わせ。疲れているので45分で切り上げる。