04.何かいいこと

TLTSA04

東京フィルメックス(映画祭)のピエール・エテックス特集上映を観にKさんと有楽町へ。映画のタイトルは『大恋愛』。久しぶりに60年代のフランス映画を観た。感想は“まあまあ”。ストーリー自体は他愛もないラブコメディーだから、ホテルの部屋のテレビでワインでも飲みながら観たらもっと楽しめたかも。コメディー映画を硬い椅子に座って有り難がって観ることに無理があるような。せめて溶かしバターをかけたポップコーンでもあればね。

帰りに昼食をとるためお店に入ると、案内された窓際の席からちょうど真下に新幹線の線路が敷かれているのが見える。
間もなく、その線路の上を白い車両がビルとビルの隙間をくねくねと身をよじらせようにこちらに向かって走ってきた。
「わあ、白蛇みたい!」
私は興奮して、写真を撮ろうと慌ててカメラを取りだした。しかし、相手は新幹線。あっという間に白蛇は窓の下を通り過ぎていく。「ああ・・・」と肩を落とすと、「どうせまたすぐに来るよ」とKさんは言う。確かにその通りだ。東京発着の新幹線の本数の多さは私も知っている。そして、実際、すぐに次の白蛇はやってきた。
「なんだか新幹線って一直線に走っていくというイメージだったけど、本当はこんなにくねくね蛇行しているのね。」
私はシャッターを切りながら、そうつぶやいた。
その日は食事の間、何度も何度も白蛇を見た。
何かいいことがあるかもしれない。